virtual / actual [pneuma]
2009.09
TOKIO OUT of PLACE, Tokyo
virtual / actual [pneuma]
バイオ・フィードバックによるメディアアート・プロジェクト
TOKIO OUT of PLACE
2009年 9月11日(金)— 10月10日(土)
”virtual/actual”は、人と自然を貫く生命の潜在的多様性をテーマとするメディアアート・プロジェクトである。2008年のプロジェクトでは、鑑賞者の脳の状態を脳波測定装置によって測定・分析し、そのデータを視聴覚イメージとしてフィードバックすることを試みたが、今回のプロジェクト[pneuma]では、鑑賞者の呼吸をセンシングし、そのリズムや強弱に基づいた視聴覚イメージの生成を行い、鑑賞者にリアルタイムでフィードバックすることを試みる。
動物にとって呼吸とは、生命を維持するための最も基本的な活動である。生物学的に見れば、それは私たちの体細胞に取り込まれた酸素によって糖を分解し、身体活動に不可欠なエネルギーを生みだすための生命維持システムである。ほんのわずかな時間であっても、呼吸を止めると人は苦しみを味わい、さらに長く呼吸停止が続くと死へと至る。それは、普段意識する事のない当たり前の身体活動=呼吸が、今こうして生きていることの奇跡に深く関わっていることを暗示する。
そもそも酸素の存在しなかった地球において、植物が光合成によって酸素を出し続け、やがては大気組成そのものを変えてしまった。そこに本来は強い酸化力を持った極めて毒性の高い気体=酸素を、生命維持のために利用する生命体が誕生したのである。それは地球における生命の潜在的多様性を裏付ける事実であり、もう一つの奇跡と言えるだろう。
一方、ヨーガや仏教、合気道などで行われる呼吸法は、人の心身の健康を維持し増進させるために、長い時をかけて培われてきた身体技法である。それは、そもそも空や無、涅槃、悟りなどとよばれる至高の精神的状態へと自らを導くための、準備としての技術であった。つまり呼吸とは、単に生命維持のための身体的生理にとどまらず、ヒトの精神と深く関わる活動でもあるのだ。
virtual / actual [pneuma]は、このような呼吸に関わる地球史的、精神史的背景をふまえながら、呼吸と生命の根源的関係性についてインタラクティヴ・アート作品を通して直感することを目指すものである。
鑑賞者の背後に呼吸センサを設置し、呼吸のリズムや息の強弱を計測。これらのデータに基づく抽象イメージを生成し、光学ガラスによる特殊スクリーンに投影する。同じくデータに基づくサウンドを生成し、鑑賞者にフィードバックする。こうして鑑賞者は、自らの呼吸とイメージを知覚することとが相互に関係し、影響を与えあうバイオ・フィードバック・システム環境に置かれるのである。やがて鑑賞者は、自らの呼吸のリズム、息の強弱など、普段は無意識の呼吸を自覚しコントロールすることによって、運動イメージの多様な振る舞いを確認する。このような、私たちの日常における知覚経験とは異なる、バイオ・フィードバックとしての知覚経験が、結果として呼吸と生命の根源的関係性を感得する扉となるだろう。
システム構成
PC:Mac Pro 3.0GHz
ソフトウェア:virtual / actual [pneuma]オリジナルソフトウェア
呼吸センサ:電波式呼吸センサ(サイデン社)
プロジェクタ:Victor DLA-HD750
ディスプレイ:光学ガラス(BK7)によるオリジナルスクリーン
ディスプレイ台:大理石(ビャンコカラーラ)
サウンドシステム:スピーカ 307SV(富士通テン)、アンプ 1705II(BOSE)、Audio Interface FA-66(EDIROL)
制作:SZ(砥綿正之、前田剛志、真下武久、森公一)
2007年、砥綿正之、前田剛志、真下武久、森公一によって結成されたアートユニット。科学と芸術を横断し、メディアテクノロジーによって人間の可能性を拡張する方法を探求している。
制作協力
二瓶 晃:インスタレーション設計施工