呼吸する庭|竹林

《呼吸する庭 竹林》は、体験者の呼吸を竹林に見立てた空間へと接続し、自らの身体を環境へと拡張するアート作品の試みである。本作では、伝統的な手法で仕上げ加工された京銘竹*を用い、これをグリット状に吊り下げることで、あたかも竹林かのようなインスタレーション空間を実現した。それぞれの竹の内部には振動モーターを組み込んでおり、モーターが駆動すると素朴な振動音が発生する。体験者はこの竹林空間の中央に座り、ゆっくりと呼吸を行う。すると体験者を取り囲む竹から、不規則で揺らぎのある振動音が響く。体験者の呼吸が竹の微細な響きとシンクロし、竹林空間を移動する音となる。普段は無意識の身体活動である呼吸が、音の移動となって音響空間を構成する。こうして体験者の身体は、呼吸を通じて竹林空間へと拡張され一体化するのである。竹は一般的な樹木と比べると際立って特殊な構造を持った生命体である。その内部のほとんどが空洞の中空構造でありながら、高強度の繊維により強くしなやかである。一般的な樹木(落葉樹、針葉樹)において、高さが15m 程度に成長した場合の幹の直径(根元)は、25~50cmが標準的とされているが、同じ15m程度に成長した竹の直径は7~15cmであり、樹木の1/3から1/4程度と極めて細い。また成長速度は驚異的で、発生から1~2ヶ月で15mの高さにまで成長する。樹木が高さ15mにまで成長するのに20~40年かかることに比べると、凄まじい成長速度である。そもそも植物学の分類においては、竹は樹木ではなくイネ科の多年草(木質化した草本)とされており、樹木とは異なる「草」の成長様式を有する植物なのである。呼吸する生物と光合成を行う生物では、生命の維持や成長の様式が全く異なる。しかし動物である私たちは、竹と同じように、身体の内部に呼吸器や消化器などの「器」すなわち空洞を有している。とりわけ本作品における呼吸(肺という空洞に酸素を取り込み二酸化炭素を排出する)を、竹の内部(成長を支える中空構造としての空洞)へと接続し振動音としてフィードバックすることは、人(動物)から竹(植物)への呼びかけと竹(植物)から人(動物)への応答とも言えるのではないか。《呼吸する庭 竹林》の体験を通じて、異なる生命種における共通性や共同性を再発見し、共生のための新たな視野や可能性を開くことができればと考えている。

助産学研究

本作品は助産学研究(呼吸瞑想の効果測定)のためのアート&サイエンスの取り組みを兼ねており、妊産婦に向けた体験会を期間内に開催する予定です。

展覧会情報

日程
2026年3月13日(金)ー3月17日(火) 11:00ー17:00(月曜休廊)

会場
堀川御池ギャラリー
〒604-0052 京都市中京区油小路通御池押油小路町 238–1
* ギャラリーには、一般利用者の駐輪場・駐車スペースはございません。
自転車・バイク・車でのご来場はご遠慮ください。公共の交通機関をご利用いただきますようお願いいたします。

プロフィール

森公一
1958年大阪生まれ。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。大学院在学中よりビデオアートの研究を始め、映像ディレクターとして数多くの作品制作に携わる。1990年代には《Cosmology of Kyoyo》などのマルチメディア・コンテンツの企画・制作を手がけ、2000年以降は真下武久と協働でヒトの生体情報を用いたメディアアート表現の研究を行なう。現在は人新世の時代状況をふまえ「地球」 「呼吸」「植物」などに注目したアートプロジェクトに取り組んでいる。
真下武久
情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科修了。メディアアートの分野を中心に作品の研究・制作を行う。アルス・エレクトロニカ・フェスティバル(2004年)、光州ビエンナーレ(2006年)、サンダンス国際映画祭(2011年)などの国際展に参加。森公一と協働で、脳波や脳血流、呼吸などの生体情報を体験者へフィードバックさせる作品を制作。グラフィックデザイナーや現代美術家、映像作家とのプロジェクトや作品制作などを行う。
その他のプロジェクト

お問い合わせ
同志社女子大学メディア創造学科事務室 0774-65-8635

制作  森公一、真下武久
協力  二瓶 晃、和泉 美枝、木村 静、勝浦眞仁、The Third Gallery AyaNPO法人てんびん三木竹材店同志社女子大学成安造形大学
助成  同志社女子大学研究助成金(個人研究:眞鍋 えみ子)