人と植物の新しい関係にむけて

呼吸する庭‒breathinggarden‒は、人と植物の新しい関係を模索する試みであり、人の呼吸と植物の光合成を接続する二つの体験型作品、《ensemble columns》《ensemble particles》によって構成している。 作品《ensemble columns》(ギャラリーB)は、複数の柱を空間に配置したインスタレーション作品である。各柱には、人の呼吸に合わせて明滅する照明、植物と共にCO2センサーを入れたガラスドーム、CO2濃度の変化に応じてサウンドを再生する装置などを組み込んでいる。人の呼吸が光に変換されて光合成を誘発し、光合成がガラスドーム内のCO2濃度を変化させ、結果として多様な植物=多様なサウンドによるアンサンブルが実現する。ゆっくりと呼吸し穏やかに変化するサウンドに浸れば、植物の生の時間・リズムと同調するだろう。もう一つの作品《ensemble particles》(ギャラリーC)も人の呼吸を光に変換し、植物の光合成を誘発する点で《ensemble columns》と同じであるが、《ensemble particles》は人の呼吸と植物の光合成によるCO2濃度の変化を、主として粒子状のCG(パーティクル・システム)を用いた視覚的表現へと変換するものである。人の呼吸に基づく粒子の運動が、植物の光合成に基づく粒子の運動と絡み合い混じり合う。相互に関連しながら描かれる運動の軌跡は、人と植物のペアがもたらす、生のエネルギーのダンスとなる。「呼吸」という人の生にとっての基本的な営みを光に変換することは、「光合成」という植物の生の基本的な営みに関与する可能性を得たことに等しい。この「呼吸」と「光合成」の接続によって生成されるサウンドやビジュアルのフィードバックは、人と植物が相互に浸透しあうような、新しい関係へと導く可能性を秘めている。

展覧会情報

日程
2024年3月15日(金)ー3月20日(水) 11:00ー17:00 (月曜休廊)

会場
堀川御池ギャラリー
〒604-0052 京都市中京区油小路通御池押油小路町 238–1
* ギャラリーには、一般利用者の駐輪場・駐車スペースはございません。
自転車・バイク・車でのご来場はご遠慮ください。公共の交通機関をご利用いただきますようお願いいたします。

体験展示

《breathing garden》では、鑑賞者ご自身の呼吸を、光と音に変換する装置を体験いただけます。
*3月20日(水)の作品体験は、難病患者の方の予約を優先させていただきます。

プロフィール

森公一
1958年大阪生まれ。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。大学院在学中よりビデオアートの研究を始め、映像ディレクターとして数多くの作品制作に携わる。1990年代には《Cosmology of Kyoyo》などのマルチメディア・コンテンツの企画・制作を手がけ、2000年以降は真下武久と協働でヒトの生体情報を用いたメディアアート表現の研究を行なう。現在は人新世の時代状況をふまえ「地球」 「呼吸」「植物」などに注目したアートプロジェクトに取り組んでいる。
真下武久
情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科修了。メディアアートの分野を中心に作品の研究・制作を行う。アルス・エレクトロニカ・フェスティバル(2004年)、光州ビエンナーレ(2006年)、サンダンス国際映画祭(2011年)などの国際展に参加。森公一と協働で、脳波や脳血流、呼吸などの生体情報を体験者へフィードバックさせる作品を制作。グラフィックデザイナーや現代美術家、映像作家とのプロジェクトや作品制作などを行う。

お問い合わせ
同志社女子大学メディア創造学科事務室 0774-65-8635

制作  森公一、真下武久
協力  和泉 美枝、木村 静、眞鍋 えみ子、長谷川 昇、二瓶 晃、星 岳彦、NPO法人てんびん、Sous-Bois fleuriste, 同志社女子大学、成安造形大学